ストレス社会の現代、不眠症で悩んでられる方は多く不眠でない方にはなかなか理解できない疾患です。出来れば睡眠導入剤、安定剤などは服用したくないもの。睡眠薬の服用を始める前に漢方でチャレンジしてみるのもいいのではないかと思われます。
不眠には原因が外的なものと内的なものがあります。またそれぞれが組み合わさっている場合もあります。

不眠はおおまかに言えば中医学でいう「心」と「肝」の疾患であることが多数をしめます。中医学でいう「心」は循環器である心臓も含むのですが高次神経系である脳も含まれます。「肝」は血液や栄養の貯蔵庫である肝臓でもありますが自律神経の調節機能も含まれます。外的な要素によってそれぞれの臓器が影響を受けたり、普段の生活や加齢によって臓器のパワーダウンから起こるような不眠もあります。パワーダウンによって起こる不眠は改善までに時間を要する場合が多くなります。

不眠症

不眠は様々な原因がありますが、それらの原因が重なることも多い疾患です。
短期間での判断ができない場合もあります。場合によっては長期間の改善期間を覚悟しなければならない疾患です。
特に病院でいただく安定剤や抗うつ剤などを服用しておられる方は、簡単な改善でないことを覚悟する必要があります。

心陰虚の不眠

中医学でいう「心」の栄養不良状態といえます。中医学では心の陰は副交感神経系、心の陽は交感神経系であると思われ、心の陰が不足することにより交感神経亢進になっています。

寝つきが悪く、動悸や焦燥感、健忘、午後の熱感、寝汗、手のひらや足の裏の熱感などをともないます。心の陰を補う処方を服用して改善を図ります。


心腎不交の不眠

上記の心陰虚の原因が、中医学でいう水の臓器「腎」のパワーダウンによって起こっている不眠になります。夜更かしや過労によって起こる場合もありますが、加齢による腎のパワーダウンが原因になる場合が多くなります。

寝つきが悪く、頭のふらつき、耳鳴り、午後の熱感、寝汗、手足のほてり、健忘、腰や膝の無力感などをともないます。中医学でいう「補腎」という方法で改善を図ります。いわゆるアンチエイジングになりますので改善に時間を要します。


心脾両虚の不眠

胃腸の機能が弱く、それにより栄養不良状態になって「心」の栄養も不良になることにより起こる不眠です。もともと幼少期から胃腸が弱い場合や、ストレスや性格などで思い悩むことが多くそれにより胃腸に負担がかかる場合もあります。

眠りが浅く、夢が多い、よく目が覚める、顔色につやがない、倦怠感、息切れ、動悸、健忘、小食、泥状便などを伴います。胃腸が弱いと気血の生成が不足するので「心陰」や「心血」が供給できません。よって胃腸の力を改善しながら心血を補う処方を服用します。


胆陰虚の不眠

びっくりすることを「胆(きも)を冷やす」と言いますが、胆のエネルギー不足である胆気虚になるとびくびくしたり優柔不断になります。中医学では胆は決断の腑と言われ、どうしたらよいかわからないような状態から不眠になると考えられます。

恐ろしくて一人で寝られなくなったり寝ていても驚きやすい、人に捕まるような感じがする、びくびくする、頭のふらつき、目まい感、ため息をつくなどを伴います。胆を温め気を補うような処方を服用して改善を図ります。


肝胆欝熱の不眠

いわゆるストレス性の不眠です。悩みや怒りにより自律神経が失調すると自律神経系の臓器である「肝」の機能障害が起こり、それにより交感神経の過亢進が起こり不眠が起こります。中医学でいうと肝の疏泄が失調して肝うつが続くことにより肝火の発生から不眠が起こります。またアルコールによる不眠もこれにあたります。

眠りが浅く、夢が多い、よく目が覚める、イライラ、怒りっぽい、胸脇部の張り、ため息が多い、口の苦さ、目の充血などを伴います。ストレスを発散し怒りを鎮静させる処方を服用します。


心火の不眠

心労が重なり交感神経が興奮し続けることにより起こる不眠です。中医学では「心」の過亢進により「心火」が亢進して心神が不安となって発生します。不眠・夢が多い症状と同時に、胸中の熱感、動悸、顔面紅潮、口が苦い、口内炎、尿が濃く少量、排尿痛、排尿困難などを伴います。「心」の熱をとる処方を服用し、交感神経を安定させて改善を図ります。

胃腸が弱い、あるいは脂っこいものや甘いものの過食により身体に老廃物が蓄積し、その老廃物が原因となって起こる不眠です。中医学ではその老廃物を「痰」といい、それが熱化して「痰熱」となって心神を擾乱することにより起こります。睡眠が浅く、夢をよく見て目が覚めやすい、胸苦しい、痰が多い、悪心、嘔吐などの症状を伴います。胃腸の動きを改善して老廃物(痰)を取り除き、余分な熱をとる処方を服用します。運動療法もおすすめです。